約束が守られないと知って、生きる世界が違われたと悟った。
喫茶店『白露庵』に住み込むようになって２年。
ようやと手にした安穏とした日常は、崩壊の音を響かせはじめた。

繰り返しみる《夢》に登場する少年を、リアは知らない。――その筈だった。
現実の側で彼を『認識』した時から、リアの周囲が変化を始める。

偽ることで自身を護ろうとした少年。己の宿命をかけて総てを護ろうとした少女。
異なる世界に存在していた二人が出逢った時、運命は大きく動き出す。

空が好きだと、彼は太陽が綻ぶように笑った。
その笑顔があるだけで、強くなれると思っていた。
出逢えてよかったと、彼は言う。　だけど、その出逢いがなければ、彼の空が砕かれることはなかった。

大人になれば、心が痛くなるような感情を持つことなんて、ないと思っていた。
あいつの恋を応援することになって、 自分の本当の気持ちに気づいてしまった。
この想いを解放する術は、どこにあるのだろう――？

仲の良い友達、単なるくされ縁。お互いの認識は同じ筈だったのに。
恋愛感情が芽生えてしまった葵は、その想いを素直に遥へ告げていた。
対する遥は、どうしても友達以上には思えないでいて…。

幼馴染を事故で失い、生きる世界に意味を見いだせずにいた少女の前に一人の少年が現れる。
彼が背負う過去を知って…。

妹は彼を好きになるかもしれない。
そんな予感があった瞬間から、心に芽吹いた想いを育てない決意をした姉。
双子ゆえになんでも判り合っていた筈なのに、生じていたずれはやがて姿を現して…。

思考能力停止のまま歩いていた花音は、突然見知らぬ少年に手首を掴まれた。
「少しだけでいい。ここにいて」
そんな懇願を向ける少年は真剣そのもので…。

雪降る中、僕と君は向かい合う。
巡る想いを押し込めて、僕は君に言う。
最初で最後の、これから先ずっと伝えることのない、ひとことを。